南アルプス北部 双児山(2649m)、駒津峰(2740m)、甲斐駒ヶ岳(2966m)、摩利支天 (2820m) 2011年7月25日

所要時間 6:50 北沢峠−−8:02 双児山−−8:30 駒津峰−−9:16 甲斐駒ヶ岳 11:03 −(ルートミスにより約7分のロス)−11:25 摩利支天−−11:56 駒津峰−−12:15 双児山−−12:51 北沢峠

概要
 北沢峠より往復。大気の状態が不安定で天候は期待できなかったが、下山時に僅かに降られただけで済んだ。しかしガスられて山頂からの展望は楽しめなかった。平日なので滅茶込みはしなかったが、乗客数は旧長谷村始発バスで3台分だった。六万石分岐では登りは直登ルート、下りは巻道経由で摩利支天に立ち寄った。なお、ほとんどの登山者は巻道経由で往復しているが、直登ルートは特に危険個所があるわけではなく、場所によって岩が大きくて手掛かり足がかりが離れていて小柄な人にはよじ登りにくい程度。


 今週は腰を痛めてしまい寝るときが一番つらい。本来ならばテントを担いでアルプスに行きたいが、このまま山に行くのもリスクが高いので軽く日帰りできる山を考え、いろいろと考慮した結果、甲斐駒を目指すことにした。甲斐駒は北沢峠経由で過去に3回くらい登っていると思う。いつもなら北沢峠に出向くときは仙丈ケ岳に向かうのだが、仙丈ケ岳は昨年も登っているのでたまには逆方向の甲斐駒としたのだった。それに甲斐駒からだったら南ア最難関の離山や坊主山が近くに見えることもあった。ただし、天気予報では大気の状態が不安定で早い時刻からガスが上がってくる可能性が高く、北沢峠発7時では山頂到着時にガスの中である可能性が高い。まあ、下界でゴロゴロしているよりは健康的だし、天然クーラーで節電にもなるし、何よりもストレス発散のためにも出歩いたほうがいい。

 天候と腰の状態を考えてバスの所要時間が短く1本で行け、しかも出発時刻が早い旧長谷村側から入ることにして諏訪ICまで中央道を走り、杖立峠を越えて高遠→旧長谷と入り仙流荘駐車場に到着。車は半分くらい埋まっているが日曜夜なので少なめだ。明日の始発はバス何台だろう? 週末よりずっと少ないだろうからのんびり寝ていていいだろう。

仙流荘前バス停 仙流荘から見た鋸岳。雲がかかっている

 5時に起床して朝飯を食い、6時の15分前に往復のチケット(荷物込み\2400)を購入しバス停に並ぶ。すぐに最初のバスがやってきて始発の予定時刻より早く出発、続いて2台目が入り私はそれに乗ることができた。始発の北沢峠到着は7:00だが15分くらい早く到着するという。早い分には文句は無い。下から見上げる鋸岳には朝から雲がかかり、今日の展望は期待できそうにないか。まあ、雨さえ降らなければいいか。といいつつもゴアの他に傘も用意した。麦藁帽子も持ったが今回は日差しが無く出番が無いかもしれない。今回の始発の客数はバス3台分であった。

バスダイヤ 北沢峠

 戸台大橋でゲートを潜ってバスは高度を上げる。対岸には鋸岳の稜線が並ぶが山頂付近は雲がかかって鹿窓は見えなかった。甲斐駒は時々姿を現した。藪沢新道は残雪のため未だ通行止めとのこと。まあ、この時代にここを登る人はほとんどいないだろうけど。北沢峠に到着すると広河原行きのバス停は満杯状態で、1台目のバスの乗客が大半だろうか、それとも長衛荘宿泊者か。2台目のバスから降りた多くの人は仙丈ケ岳方面へと向かうようであり、甲斐駒側に寄ってくる人の姿は少なかった。歩き出す前にTシャツ半ズボン姿に変身し放熱を良くしてから出発した。峠の気温は12℃。体を動かさないと寒いくらいで下界の暑さとは別世界だ。これだから今の時期は高いところしか登る気がしない。

甲斐駒方面登山道入口 森林限界までシラビソ樹林が続く

 北沢峠の標高は約2030m、植生は最初から深いソラビソ樹林で展望は無くひたすら登る。ま、樹林の中なので日差しがあっても涼しいのはうれしいけど。富士山とは正反対だ。樹林中なので前方を登っている登山者の姿も見えないが、私の出発時に少し先に出発した単独男性の姿だけがチラホラと見えていた。やがて尾根の一角で樹林が切れて戸台川が見下ろせる場所があり、そこで男性を追い越した。さらに登って10人近く?の大パーティーを追い越す。このパーティーは帰りに3度ほど追い越した。

双児山への登り 双児山山頂
双児山から見た北岳 双児山から見た甲斐駒
双児山付近から見た鋸岳 双児山付近から見た嫦娥岳

 森林限界の様相が見え始めると双児山は近く、露岩で上空が開けた場所に飛び出すと双児山山頂だ。ここで初めて視界が開けるが森林限界ギリギリのため北側半分しか見通しは無く、甲斐駒方面のみ見通せる。少しガスがかかっているがまだ甲斐駒は晴れのエリア内だ。駒津峰へはいったん鞍部に下ってハイマツの斜面を登るようだ。斜面に刻まれた登山道上には人の姿は見えず、本日の始発バスのお客では私が先頭に立ったようだ。

駒津峰との鞍部付近 森林限界を超える
双児山を振り返る 戸台川

 ハイマツと潅木の切り開かれた尾根を少し下ると再びシラビソ樹林に変貌し、木立の中を進んでいく。鞍部から緩い登りにかかり標高が2650m付近で再び森林限界を突破、今度はずっと森林限界以上が続き、見上げる斜面は一面のハイマツに覆われ、そこに砂礫に覆われたジグザグの登山道が伸びていて、いかにもアルプスらしい光景だ。これに雷鳥がいればいいアクセントになるのだが甲斐駒周辺では雷鳥は見たことがない。振り向けば北岳が聳えているのが見えるが仙丈ケ岳は雲の中、甲府盆地も雲の下であった。すでに中央アルプスも雲の中に沈んでいた。当然、北アルプスも雲の中。

駒津峰山頂 駒津峰から見た鋸岳。雲がかなり増えた
駒津峰から見た6合目避難小屋 駒津峰から見た双児山
駒津峰から見た甲斐駒と摩利支天

 登りきった平坦なピークが駒津峰で、ここで仙水峠からの登山道が合流する。休日と違って男性が1名だけの静かな場所だった。この付近から見る嫦娥岳はピークらしいピークに見えないのが残念だ。甲斐駒〜鋸岳間の避難小屋近くの砂礫地は良く見えており、写真判定で避難小屋の屋根を発見できた。

六万石から見た甲斐駒 直登ルートと巻道ルートの分岐
直登ルートから見た駒津峰 男性が下っていった

 駒津峰より先は露岩の尾根が続き、不慣れなハイカーだと歩行スピードが落ちる区間となる。まあ、あまり危険な場所があるわけではないので、僅かにルートを外して岩の上を歩いて追い越したりする。小鞍部(六万石?)では休憩している人の姿も見えた。その先で直登ルートと巻道ルートが分岐するが、ここは時間短縮のため直登コースへ足を踏み入れる。巨大な花崗岩が積み重なった尾根で岩を巻きつつ進んでいくが、要所に目印があるので自分でルートを考える必要はない。穂高のようにゴツゴツした岩ではなく風化して表面が滑らかな花崗岩なので、1枚岩のような場所では手がかり足がかりが無く登れないので、ルートはそんな場所を避けて小型の岩を乗り越えるようになっている。途中、2人ばかり男性が下っていった。

巨岩帯が終わって滑らかな岩稜帯を登る ハイマツ帯を登る
砂礫帯との境界 白い砂礫帯に入る

 巨岩帯を抜けると凸凹の少ない露岩帯を登り、白砂の砂礫地に変貌する。ここまで来れば山頂は目前だが、既に周囲はガスが上がってきてしまい大展望は見られなくなってしまった。まあ、それも覚悟の上で来ているのでしょうがない。さらに2人ほど直登コースを下っていき、最後の一人とすれ違ってから僅かで甲斐駒山頂に到着した。

甲斐駒山頂 この巨岩が甲斐駒最高地点
祠とわらじ 妙に黒い1等三角点

 久しぶりの山頂はガスに覆われて展望皆無、日差しも無く体を動かさないと寒いくらいだ。ただ、ガスってはいてもまだ薄い霧で太陽の赤外線を感じることもあり、今すぐ雨が降ってきそうな気配はない。下山のバスの時刻は10時の次は13時であり、登りでかかった時間が約2時間半だったので下りはどれだけ悪くても2時間見込めば間違いなく、たぶん1時間半でいけるのではなかろうか。とすればまだ2時間くらい余裕があり、早く下山してもやることがないので防寒着を着こんで山頂で昼寝。寝ていたら日差しが出てきて直射日光に炙られて暑さで目覚めたが、晴れているのは頭上だけで周囲は雲の中のままだった。久しぶりに坊主山を間近で見たかったのだが。

巻道経由で下山開始 摩利支天へと続く尾根西側を下る
登山道は途中で尾根を離れて西にずれる 摩利支天分岐

 2時間も山頂で粘った後では登山者の姿もめっきり減って静かになっていた。下山は巻道経由で摩利支天に立ち寄ることにしてまずは黒戸尾根を僅かに下り、小鞍部で右に逃げて摩利支天へと続く尾根の西側直下を下っていく。このまま摩利支天まで道が続くのかと思いきや、途中で右に逃げて摩利支天が遠ざかってしまうため、途中で登山道を外れて空身で摩利支天目指して尾根を下っていく。しかし鞍部を目前にして崖状地形に出てしまいまっすぐ下れず、西側を巻く必要が出てきた。よく見ると西斜面を下ったところにロープが張ってあり登山道があることが分かった。どうやらさっきザックをデポしたところよりももっと先に進んだところで摩利支天との分岐があるらしい。いったんザックをデポした場所まで登り返してザックを背負って巻道を進むと摩利支天分岐にはちゃんと標識が立っていた。ここにザックをデポして空身で再び摩利支天を目指した。

砂礫地を緩やかに下っていく 今度は緩く登る
鞍部から東へ登るルート 鞍部から西を巻くルート

 さすが登山道で今度は安全でまともな道であり、少しずつ高度を落としながら摩利支天北側鞍部に到着、ここで道は真東にまっすぐ登るルートと右に巻きながら登るルートに分かれるが、まずは直登ルートを行ってみる。前回、どのように登ったのか全く記憶に残っていないがどちらかのルートを行ったはずだ。あのときは確か今と同じくらいの時期で、気圧配置の関係で南西の湿った強風が吹き荒れてこの辺りは濃いガスの中だった。フェーン現象で関東は気温が上がり、越谷で37℃だったと記憶している。今は温暖化が進んで夏の最高気温37℃では驚かなくなったが、当時はかなり高い部類だった。強風は夜中も吹き続け、摩利支天の巨岩の影で幕営したがテントの骨が折れそうなくらいの風で、夜中にテントの骨を抜いてしぼんだテントの中で寝たのであった。

摩利支天山頂 摩利支天南側の砂礫地

 今回もガスって視界は無いが風は穏やかであった。山頂は信仰登山の跡が多数見られ、昔も今も登られているようだ。これで下界が見えたらよかったのだが。足元から切れ落ちて絶景だろうな。

巻道を下る 巻道ルートを示す目印

 巻道に戻ってザックを回収。帰りのバスの時刻が気がかりだがどうにかなるか。摩利支天に寄らなければ完全に安全圏内だったのだが、ここまで来て寄らないのはもったいない。いざとなったら最後は走るか。いや、そこまでしなくとも間に合うはずだが、時間と標高を気にしながら歩くか。双児山での残り時間が勝負となる。双児山から北沢峠まで標高差約600m、私の場合、下りなら気合を入れれば標高差900m/hのペースで行けるので双児山で残り時間40分以上あれば確実にバスに間に合う。

六万石付近。既にガスの中 駒津峰から下る。ここもガスの中

 六万石の巨岩群を抜けて細い尾根を辿って駒津峰を通過、ガスって周囲は見えないままだ。ハイマツの広い尾根を下っていくと雨がポツポツ降ってきた! 思ったより早いが雷は聞こえないのでまだいい。この先で樹林帯に入るのでゴアは着ないでそのまま歩き続ける。まだ本降り前で樹林に入ると体に落ちてくる水滴は無くなった。双児山の登りにかかって森林限界を超えると再び雨に晒されるが弱まってきたようだ。このまま止んでくれるのか、いや、これからの午後の時間帯の方が雨の降る確率は高いのが常識だろう。できるだけ早いうちに下山するのが得策だ。まあ、バスの時刻が迫っているので天候とは無関係に急いでいるのだけれど。

 双児山通過がバスの時刻の45分前でどうにか安全圏内のようだ。しかしこの先はジグザグに下る道で時間の割りに標高が稼げないのでのんびりとは歩けない。歩幅を広げて早足でガンガン下っていった。一面のシラビソ樹林で藪はないので直線的に下れればいいのだが、ここより下部では尾根が広がって地形から峠の方向を読むことはできず、結局はジグザグの登山道を行くしかないのであった。

 午後なので登ってくる人はほとんどおらず下りの人を追い越すことが多かった。でも登りの人が1名だけいたが、これから登って天候が心配だ。どこでお泊りだろうか。やがて峠が見えてきて、人の群れに出る前に濡れタオルで全身の汗を拭って身なりを整えた。

北沢峠の広河原方面バス乗場。帰りもいっぱい 北沢峠の旧長谷村方面バス乗り場

 北沢峠では朝と同じく広河原方面のテントは人と荷物で満杯状態で、旧長谷村方面は団体様を除いてそこそこの人の入り。団体客は専用にバスが仕立てられてそちらに乗り込み、一般客はもう1台のバスに乗り込んだ。峠でも雨に降られるかと思いきやで意外に空は明るかった。下界に下るにつれて天候は回復し、仙流荘では雲は多目ながら太陽が出ていた。


 今回はガスられはしたが、そこそこ山を楽しむことができた。ただ、久しぶりに軽い偏頭痛に襲われて、帰りのバスでは車酔い状態で下界に到着してからゲロゲロであった。夏の暑い時期でも偏頭痛の薬は持ち歩いた方が良さそうだ。

 

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